2016年11月22日火曜日

『自我の起源』(真木悠介 岩波)【感想】

2007年9月に書いた感想文の改訂版です。
夢香
 著者は巻末の補論1で「この仕事は、次のような全体構想を持つ〈自我の比較社会学〉の、第Ⅰ部の骨組みである」とのべています。ⅡからⅤ部は夫々原始共同体、文明諸社会、近代社会、現代社会、に対応するとのことだそうです。何と雄大な計画!
 第Ⅰ部に含まれている本書は、人間の自我の起源を、地球上に生命体が誕生するところまで遡って考察していますが、それは自己を意識している人間という存在自体が、重層的に構成されてきた生物体であるという認識に基づいていると、著者が考えたからだと思います。
 生物体としての人間が知識として理解されたとしても、それだけで人間の自我の起源が解明されるわけではないことは言うまでもありませんが、その知識は人間の自我というものに対する思考を深める力を持つものだと読み取れました。
 本書は、自我をもつ人間存在に対する理解を深めるために、また、生物科学などの科学的知識を短絡的に人間や社会に適用することの危うさを知るためにも、とても役立つと思います。
 追記、真木悠介は見田宗介先生の別名です

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