この本は、イギリスにおいて、清教徒革命の頃(17世紀中頃)に書かれたものです。ホッブズは、人間を国家(リヴァイアサン)の素材であると認識し、まず人間の洞察から始めている。第一部はその箇所に該当しているが、有名なホッブズの政治哲学の考え方はこの第一部の十三章から十六章にかけて示されている。
その考え方は簡単に言うと次のようになる。人間は、自然状態においては、自身の生命を維持するためには何をしても許されるべきである。だが、人間というものは、相互不信に陥れば恐怖に囚われるものである。よって、自然状態において相互不信に陥れば、各人が各人に対して戦うという状況が起り、互いに殺し合い滅亡する。だからそれを回避するには、生存を保証するルールを守らせるだけの力を持った共通な権力(国家)を作る以外にはない。
注意しなければならないのは、よく引き合いに出される「万人の万人に対する戦い」が政治思想としてホッブズの一番基本的な考え方であると誤解することです。一番基本的な政治思想は「平和を希求すべし」(第一の自然法の基本部分)ということであって、そのことを可能にするものは、人間の理性である、という思想にあります。尚、「万人の万人に対する戦い」という言葉は『リヴァイアサン』ではなく、それより前に書かれた『市民論』に使われています。
やはり読み継がれてきた古典は、自分で原典に触れて、全部では無くても大事な箇所をゆっくりと読むと勉強になります。そこから、他の人の考え(先入見)になるべく惑わされずに、また当時の個別事情に惑わされずに、普遍的なものを読み取るところに面白さがあると思えます。なにしろ時代背景、現実条件が全然違うのですから。付け加えれば、その違いの理解は歴史の知識があればあるだけ深まることは容易に推測できます。
※もう少し詳しく知りたい時には、別のブログ「爺ーじの哲学系名著読解」をみてね